30/8/9 ホソク
目を擦りながら起き上がった。
養護施設の兄さんたちが、静かについて来なよ!、ジェスチャーをするのが見えた。
実際は、もう少し寝ていたかったけれど、そのまま兄さんたちの言う通りについて行く。
こそこそと部屋を抜け出して、廊下を通り過ぎた。
あたりは真っ暗だ。
何か指示されていたっけ、と、考えたけれど、就寝時刻はとっくに過ぎているということ以外には、なんの情報もなかった。
階段を上がって、屋上に向かう。
鉄製の扉を開いた。
キィイイ…
その音に、兄さんたちが驚いて立ち止まったので、僕も同じようにした。
あたりを見回してから、屋上に入り、わらわらと集まって座った。
「僕たち、どうしてここに上がって来たの?」
僕の質問に、一番年上の兄さんが答えた。
「ちょっとだけ待ってみな、チョン・ホソク」
その瞬間だった。
パン!
一つ、音が聞こえて、北の空が明るくなった。
僕はびっくりして目を閉じて、身体を竦めた。
何かが燃えるような匂いがした気がした。
「うわっ!」
誰かが音に怯えたのをみて、兄さんが「静かにしろよ」と嗜めた。
僕はこっそり細目をあけて、北の空を見上げた。また、パン!、と音がして、夜空に星が輝いた。
「あれは、星じゃなくて、花火だよ。」
兄さんが語った。
花火は続けて上がった。
僕は、屋上で見聞きした、空で輝く星を、光を、花を、見上げた。
チョン・ホソクは、泣いた。泣いてしまった。
兄さんたちがからかってくる声が聞こえてくる。クソっ!と、袖で目を擦ったが、どんどん涙が出て、止まらなかった。
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