30/9/12 ジョングク

人が集まっているところに向かって歩いた。

何かあったみたいだ。

遊園地でもなく、学校でもない。

そんな場所に人が押し寄せるなんて、本の中の出来事みたいだ。

ざわつく声に、恐怖を感じた。

「なにがあったのですか?」

「どんなに生きても、怖いことはあるなぁ」

誰かが通り様に言った。

人の間をすり抜けて、前に出た。

怖くても、気になったから。

とてつもなく大きな穴が、地面にあいていた。

それはシンクホールだった。

僕は少しずつ前へ進む。

その穴の中に何があるのか、見たかった。

真っ昼間だというのに、穴の中はよく見えなかった。

土が崩れ落ちた面には、木の根っこのようなものが飛び出しているだけだった。

もう一歩前に進む。

「気をつけなさい!」

誰かが後ろで叫んだ。

運動靴の先っぽが、穴の中に入ったと同時に、土が崩れて中が揺れた。

驚いて後退りした、その瞬間だった。

穴の中で、何か刃のようなものが光った。

それは光のようでもあり、穴の中にあいた、ほかの穴のようでもあった。

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