21/5/15 ナムジュン

こそこそと玄関に入った。

ドアノブをしっかりと掴み、慎重に回して辺りを伺う。誰の声も聞こえない。

顔を入れて見回したが、家の中は真っ暗だった。一歩中へ入った。

「お母さん」

呼んでみたが、返事はなかった。

灯りをつけようとして、もう一度辺りを見回した。今は21時過ぎだ。家に誰もいないはずはなかった。

「お母さん」

もう一度呼んだが、静かなままだった。

今日は、普段よりも帰宅が遅かった。

いつもは学校が終わるや否や、母の手伝いをしていたが、一度くらい、友達と遊んでみたかった。

だから連絡もせずに、遅くに帰ってきた。

だけれど、家には誰もいない。

不思議とゾッとした気がして、掌で腕を掴んだまま、暗い居間にそのまま立ち尽くした。

そうしていると、突然、電話が鳴った。

寒気がした。

電話が鳴っているのに、なぜか出てはいけないような、そんな、奇妙な感じがした。

電話に出たら全てが変わってしまうような。そして、今の自分に戻れないような。

不吉な感じだった。

けれど、電話はずっと鳴っているので、俺は最終的に電話の前までいき、受話器を取った。

0コメント

  • 1000 / 1000