2/8/22 ユンギ

ソクジン兄さんから音楽のファイルを受け取り、席についた。

"俺たちの教室"で手に入れた楽譜をくまなく調べると、あるページの余白に、文が書かれていた。

『一緒なら笑うことができる』

俺の字ではなかった。

遠い昔を思い出す。

霧で一杯の日だった。

たまたま会ったソクジン兄さんと二人で、運動場を横切った。

お互いぎこちなかった。

俺は、ポケットに手を突っ込み、ワザとゆっくりと歩いた。

とりあえず立ち去ってくれ、と願ったが、兄さんはそうはしなかった。代りに、適当な会話をしようとした。

その度に、一層ぎこちなくなった。

俺は知らず知らずに尋ねた。

「兄さんが最後に心から笑ったのはいつですか?」

兄さんは答えなかった。

俺も、二度と聞かなかった。

『一緒なら、笑うことができる』

この文は、恐らく、俺の質問に対しての答えだ。

兄さんが書いたという確証はなかった。

そんなものは必要なかった。

楽譜に書かれた旋律は、幼稚だった。

二年前の、その当時の音楽は成熟していなくて、乱暴だった。滑らかでもなく、美しくもなかった。

高等学校を離れてからの思い出は、酒に酔ってフラフラしながら歩き回ったことだけだが、必ずしもそんな日だけではなかったように思える。

一晩、当時の音楽を直し続けた。

そして、それに、こんな名前をつけた。

『一緒なら、笑うことができる』

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